枝筆書庵

三糸ひかり

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燎原の火

 

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 ところが、現実はまったくそれと逆のようである。戦後一時期燎原の火のごとき勢いで日本史ブームがおとずれ、そのなかで大発行部数を持つ啓蒙書が流布されたが、これらを含めて歴史書田沼意次(父子・兄弟)に関する部分を見ると、前記のような配慮がほとんど見られない。とくに歴史ブームのなかで出された啓蒙書を見ると、その点が目だつようである。なかんずく悪人田沼意次をえがく場合には、その典拠とする史料批判が、ほとんどまったくといってよいほどなされておらず、田沼の悪評・悪行を記したものであれば何でも取り上げて、これを”歴史的事実として”または”あたかも歴史的事実かのごとく”書きたてている。それのみではなく、それらの資料を使用するときに歴史家的配慮がほとんどなされておらず、少しでも面白ければそれでよいといった非学問的態度さえ見えるかのごとくである。そこには義憤さえ感じさせるものがある。


大石慎三郎(監)、序文(1970)、p5-6
後藤一朗(著)『田沼意次 その虚実』清水書院、2019(1971、1984

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 面白さは重要な要素の一つであるにせよ、それを適用する場面は選ばなければいけません。

 それにしても、これが書かれたのが1970年です。