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おいしいラーメン

 

伴名練『なめらかな世界と、その敵』早川書房


 感想を一言にすると、おいしいラーメン。


 いわゆるネタバレを避けるための緩衝として期待値の話を。
 世間の評価を参照すると、どうにも期待値が過剰エラーを返すということが『三体』で明瞭になってきたので、だいぶ刈り込みはしたものの、まだ甘いらしい。言語というか表現はインフレしやすいとは思っているものの、自分だけならともかく、他人に調整をかけるのは実務として無理があるので、めんどくさいなぁと思う。
 『三体』の時は、おもしろいにもかかわらず、期待値が青天井過ぎたがためにその落差に困惑し、今回はおいしいラーメンはラーメンがおいしいのではなくスープがおいしいのではないだろうかというような疑念に迷い込む程度で済んだ。それなりにうまくいったようではある。
 なんでこんなことをあーだこーだしているのかというと、まだこの後に『息吹』『黄金列車』『三体Ⅱ』があるから。間違えると、勝手にダメージを受けることになるので、できることはしておきたい。
 なにもなしに選んだ物を読んでばちこーんと衝撃を受けるのが一番いいのかもしれない。

 

 収録順に。
・「なめらかな世界と、その敵」
 そもそもにおいて、この題とポパーとの関連が気になっていたというのがある。題だけについていえば、ポパーからの直ではなく間にもう一つ挟まっているというのは事前に調べた。
 冒頭から、なんか変なことやってんねぇという感じ。マコトが出現するまでで、だいたいの様式のようなものには馴染める。変なことにせよわかりやすい。
 読み終わってから検索したところでは、読み込めばこの段階でも記述から構造がわかるようになっているということなので、軽く流してしまったのはもったいなかったかもしれない。

 

・「ゼロ年代の臨界点」
 最後の最後にあるフジの言葉(p68)がとてもすばらしい。

 

・「美亜羽へ贈る拳銃」
 古式ゆかしいラブロマンス、などとすると怒られるだろうか。でも要件は足りていると思う。

 「なめらか~」も「美亜羽」も、後の「アイアンメイデン」も「ひかりより~」も、異質、孤立、疎外、不親和、順応あたりの因子が充ち満ちているので、相性がいいのだろう。(SFを利用して)虚構においてそのあたりを際立たせることができれば、それはじつに有効。

 p132の1行目はどうなんだろうとは思った。別の表現を使える人であると判断しているので、それでなおこれでないといけないという理由。


・「ホーリーアイアンメイデン」
 慈愛に満ちた死刑。
 穏やかすぎる気もするが、このぐらいがちょうどいいのかもしれない。


・「シンギュラリティ・ソヴィエト」
 みんな大好きソ連


・「ひかりより速く、ゆるやかに」
 2700年必要だというのは、まことに説得力のある言い分だと私は思う。絶対値が問題なのではなく、つながりが切れる寸前の呆れかえるような距離ということ。
 博奕を打つところで、馬鹿だなぁと思う。この馬鹿だなぁは、青春を是認する時に目を細めたくなる馬鹿だなぁである。
 文明尺度がそれだというのは、まあ、お話の都合だ。

 

 
 短篇集なのでしょうがないとはいえ、不確定の言いさしを一冊で何回も読むとめんどくさくなるというのは覚えておきたい。全部書いて戦うのが理想。そう簡単に思い描いたとおりに出来れば苦労はしない。だからあがかざるを得ない。