はこもの

 本郷恵子院政 天皇上皇の日本史』講談社現代新書、2019
 

 近頃、なにかと話題の新書形態であり、これまた別の方面からもなにかと話題の天皇(家)についての本。院政と銘打たれてはいますが、それを理解するにはその前後を踏まえないと効果半減なので記述されている範囲は長いです。

 

 それにしても、摂関政治にせよ院政にせよ、そのシステムの理想的完成形が実現しても、それ以降の代で、理想から離れていくというのは、普遍の真理なのでしょうか。

 

 「大仏建立は公共事業」と今のネットではみんな二言目に言ってますね。間違いではないにせよ、もうちょっとそれなりの理由があることがわかります。

 

・雑なまとめ

 1.徴税の効率化によって富が増える。

 2.その富を流す先が必要。対象は流入させるに充分な規模が必要。寺社仏閣。

 3.かつ、出家した天皇家子女らにもとづく宗教界からの支援もまかなえる。

 

 「箱」が必要というのも、今も昔も変わらないことですね。

 文化が花開くのは景気が良いときですよ、ええ。

 

 

 

 

 

ボンヘッファー

 

  

宮田光雄『ボンヘッファー 反ナチ抵抗者の生涯と思想』岩波現代文庫、2019

   

 まえがきに「日本におけるドイツ現代史への関心の高さにもかかわらず、ボンヘッファーの名前は、かならずしも一般読者にはよく知られていないのではないかと思われます。」と書かれています。
 思うに、日本でボンヘッファー知名度が今よりも良くなることは、たぶんないでしょう。対ナチス抵抗運動という点で注目されたとしても、キリスト教神学者という要素は、こういう言い方はどうかとは思いますが、残念ながら役に立つことはないでしょう。

 私がボンヘッファーをちゃんと認識したのは、昔、書庫でヴェイユ関係の本を探しているときに隣の棚にあった(フランスとドイツなので棚も隣接する)からなので、そもそものきっかけが多くの人にはたぶんない。

 

 即決裁判と司法的復権の項は、これまたどうかとは思いますが、興味深いです。「司法的」とくっついているところが重要で、単純な名誉回復とはまた少し違う。

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 このとき当局の一部には、不当判決にたいする抗告はボンヘッファーの近親者から提起されるべきだといった不満の声も出ていたようです。しかし、当然のことながら、ボンヘッファーの家族や友人たちのあいだからは、そうした必要をいっさい認めませんでした。じじつ、投書に示された一つの声は、当時の一般的雰囲気をよく伝えています。

    「ディートリヒ・ボンヘッファーは何ら復権される必要はない。彼とその仲間の人びとが抵抗に身を投じ生命を捧げたという事実は、この上ない名誉なこと以外の何ものでもない。すでに五〇年来、ドイツを世界の中で復権してくれた者こそ、まさにディートリヒ・ボンヘッファーにほかならないのだ」。

p59-60

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 先日、式典でのメルケルさんの不服従が責務になることもあるというような発言がありました。そういう意味で、「司法的」以外の部分については言うまでもない。神学者が、ヒトラー暗殺計画に荷担するという点も忘れてはいけない。

 そんなわけで、なかなか簡単には読み解けない部分が多々あります。

 

 

 末尾の50ページほどで、ボンヘッファーによるの日本研究、天皇制研究から、ナチスの体制をかざし見る(日本研究にナチスをすかし見る)という項があります。あまり見かけないタイプの話なので興味があればここだけで読んでみるのもありかとは思います。

 

 

百科全書、サド、アントワネット

キャロリン・パーネル、藤井千絵(訳)『見ることは信じることではない 啓蒙主義の驚くべき感覚世界』白水社、2019

 

 当時の文化や世界認識についての本。なお、軽め(重め?)の18世紀ヨーロッパトリビア集に擬態しているとも言えます。それ目的で読んでも楽しめるでしょう。

 

 読み終わる頃には、当時の思考の仕方の癖とでも呼ぶべきものが、感覚としてなんとなくわかるようになっているはずです。

チーズケーキ

 先日ほぼ初めての喫茶店で食べたチーズケーキがおいしかったです。チーズケーキらしさを排除しつつ、しっかりとチーズケーキであるという素晴らしいものでした。

 コーヒーもおいしかったので、また行ってみようと思っています。

 

朝顔

 朝顔を育てています。育てているというか世話をしているというのが適切でしょう。竹やら麻紐やらをせっせと用意する。

 ことしは天候がよかったのかなんなのかはわかりませんが、低いところは小さなジャングルのようになってしまい、上へと誘導したら私の背丈を超えました。

 毎朝花が咲きます。