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北川忠彦『世阿弥』


北川忠彦世阿弥講談社学術文庫

 

 わかりやすく決めつけると、花伝書風姿花伝)に主軸を置かない世阿弥本で、世阿弥外部から世阿弥をあぶり出そうとしている本。

 

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これまでの世阿弥論は、すべて世阿弥そのものに焦点をあてて論じられている。それに対し、室町期の能の主流は観阿弥――宮増――観世小次郎の線にあって、世阿弥は傍流的位置にあったという前提のもとに、その生涯と業績を論じてみたのが本書である。

p221 あとがき
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 現代でも通用しつつ、当時(の大衆)からすればずいぶんと時代を先取りしすぎていて訳がわからなかっただろうと思われるのが鬼について。

 

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 前にも述べたように、同じく能の鬼と言っても砕動風鬼と力動風鬼がある。砕動風とは形は鬼であるが心は人、力動風とは形心ともに鬼という違いがある。世阿弥が鬼を砕動に限ったのは、鬼というものを人間の執心によって生ずるものと解したところによる。

p199
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 六条御息所などが砕動風に当たる。地獄の鬼などの鬼らしい鬼が力動風。言いたいことはわかるが、大衆芸能に多く求められるのは、やはりわかりやすい方の鬼なので、世阿弥が傍流というのもよくわかる。